Case Study

「こんなに物事を深く考えてる社員やったんや」──私の考えを押し付けるのをやめたら、社員が動き出した話

2026.3.19

「こんなに物事を深く考えてる社員やったんや」──私の考えを押し付けるのをやめたら、社員が動き出した話

AI社長 導入事例

企業名: 株式会社ツボイ / 住まいるコンシェルジュ ツボイ
事業内容: リフォーム業
 創業: 1974年
 代表: 坪井良和 
導入サービス:AI社長(以下、オリジナル版のAIキャプテンと呼ぶ)
導入期間: 1年半
今回の語り手: 坪井良和 様(代表)

はじめに

株式会社ツボイは、1974年創業のリフォーム会社です。
代表の坪井良和社長は、社員一人ひとりの成長に向き合い続けてきた経営者ですが、ある時「自分の考えや意見を言えば言うほど、社員が発言しなくなっていく」という静かなジレンマに気づきました。

今回の導入は、社長自身のAI化ではなく、リフォーム業界30年の知見を持つ専門人材の考え方や指導法をAIに実装し、社員の人財育成(※)に活用するという取り組みです。AI社長をベースに、「AIキャプテン」と名付けられたこのAIが、社員との毎日の対話を通じてどんな変化をもたらしたのか、坪井社長に伺いました。

※株式会社ツボイでは、人材を人財と表現しています

導入前の状況 ──私の考えや意見を言えば言うほどスタッフは違う意見が言えなくなっていった

── 社員にもっと自分で考えてほしいと感じていた背景は何でしたか?

坪井社長は、社員との1on1ミーティングを毎週欠かさず行っていました。1時間、一人ずつ向き合って話を聞く。社員の悩みも把握しているつもりでした。

しかし、ふと気づいたことがありました。

「こんなことで悩んでて、こうすれば改善されるのにな、って思いながらいろいろ伝えていたんです。でも気がついたら、『社長どう思うんですか』っていう会話が増えていて」

答えを持っている自分が「こうたらいいやん」と伝え、社員はそれに従う。一見うまく回っているようで、実は社員の「自分で考える力」を少しずつ奪っていたのです。

坪井社長はそれを「まずい」と感じていました。

さらに、月1回の研修にも限界を感じていました。研修を受けた直後はモチベーションが上がる。しかし次の研修まで1ヶ月空く。その間に壁にぶつかると、また元に戻ってしまう。その繰り返しだったのです。

「毎日相談できる相手がいたら」
──そう思っていたとき、AIキャプテンの構想を耳にしました。

導入の経緯 ──「考えさせるAI」があると聞いた日

── AIキャプテンの構想を初めて聞いたとき、どんな印象を持ちましたか?

坪井社長がAIキャプテンの話を初めて聞いたとき、率直に「すごいいいのができるな」と感じたそうです。
ただし、最初からすべてを理解していたわけではなかったそう…

「もともとAIっていうのは、答えを教えてもらうものだと思ってたんです。僕も間違った認識を持ってました」

ところが、AIキャプテンにはティーチングモード(答えを教える)だけでなく、コーチングモード(考える力を育てる)があります。相手に問いを投げかけ、思考を促します。答えではなく、問いを返してくれるのです。

「コーチングモードもついてるんだって聞いた時に、これはめちゃくちゃいいなと思って」

坪井社長自身、1on1で本来やりたかったのはまさにこれでした。

社員に自分で考えてほしい。でも、性格上つい答えを言ってしまう。

こんな悩みに、AIキャプテンならその役割を「ぶれずに」やり続けてくれます。

人間のように疲れることも、感情的になることもなく、
常に一定の姿勢で問いを投げ続けてくれる存在──それが決め手でした。

日常の活用 ──質問が、勝手に進化していく

── 社員の方々は、どのような場面でAIキャプテンを活用していますか?

導入後、スタッフ4名が毎日AIキャプテンとの「1日の振り返り」を始めました。各自が時間を決め、その日の出来事を振り返ります。最初はシンプルな内容でした。

「始める頃は、うまくいかなかったことを振り返ってたんです」

ところが、使い続けるうちに変化が起きました。
「うまくいったこと」を振り返るようになり、「さらにうまくいくためにはどうしたらいいか」を自分から問いかけるようになったのです。

さらには、こんな使い方をするスタッフまで現れました。

「私の物事の考え方について、AIキャプテンから見てどう感じますか」
「自分の性格特徴を生かすためにはアドバイスもらえないですか」

──もはや業務の振り返りを超えて、自分自身の思考パターンや性格にまで踏み込んだ対話をしています。

坪井社長は、この変化をこう表現します。

「僕が何か言うことなんかほぼなくて。みんな自分で考えてます」

誰かに指示されたわけではありません。
毎日のラリーの中で試行錯誤しながら、「こういう質問もできるな」と自分で発見していく。質問の仕方も日々工夫されていきます。知らず知らずのうちに、社員たち自身が使い方をブラッシュアップしているのです。

興味深いのは、社員とAIキャプテンとの関係性の変化です。

── 社員の皆さんにとって、AIキャプテンはどんな存在になっていますか?

「最近はなんか、友達みたいになってます」

最初は言葉遣いにも気を使い、本音を隠す部分もあったそうです。
しかし今では、AIキャプテンの返答の方向がずれていると感じたら、自ら「話ずれましたんで、ちょっと質問の仕方変えてください」と修正に入ります。遠慮なく、率直に対話できる関係になっています。

社長の発見 ──「こんなに物事考えてる子やったんや」

── AIキャプテンを特におすすめするとしたら、どの点ですか?

坪井社長にとって最大の発見は、社員の本当の姿を知ったことでした。

1年間、1on1ミーティングを続けてきました。社員の悩みも把握できていると思っていました。しかし、AIキャプテンと社員のやりとりのログを見たとき、その認識は覆されたのです。

「これは僕には引き出せなかった質問やったりとか、なるほど相手の本質をここまで明確に言葉として言語化できるっていうのは──これは僕には無理でしたね」

AIキャプテンには感情がありません。だからこそ、社員は本音で話せます。

人間相手だと「こんなこと言ったらバカって思われるかな」と気遣ってしまう部分があります。社長に対してはなおさらです。しかしAIは絶対に怒らないし、感情的にもならない。心理的安全性が100%の相手に、社員たちは自分の考えを素直に吐き出していました。

「僕とやってる時は、答え欲しいんやろうなと思って答え言ってたけど、実はそうじゃなくて。しっかり自分で物事考えてたけど僕がああだこうだって言うから、言えなかっただけの話であって」

社員は考えていなかったのではありません。
社長が答えを出すから、言えなかっただけだったのです。
このことに気づいた瞬間を、坪井社長は「すっごく理解できました」と静かに語りました。

汎用AIとの違い ──なぜ汎用AIではなく、AIキャプテンだったのか

ChatGPTなどの汎用AIでも、質問すれば答えは返ってきます。

しかし坪井社長の体験は、AIキャプテンならではのものでした。その違いは大きく3つあります。

── 汎用AIとAIキャプテンの違いは、どこにあると感じていますか?

まず、「教える」より「考えさせる」設計になっていること。汎用AIは聞かれたことに最適な回答を返しますが、AIキャプテンのコーチングモードはあえて答えを出さず、問いを返します。社員が自分で考え、言語化する過程に価値を置いています。

次に、業界を知っている相手だからこそ深い対話ができること。AIキャプテンの中核にはリフォーム業界30年の知見があります。現場の悩み、営業の壁、属人化の課題──業界特有の文脈を理解した上での問いかけだからこそ、社員の思考は表面的なところで止まらず、本質まで掘り下げられます。

そして、常に安定していること。AIキャプテンのもとになった指導者は、時に厳しく、時に優しく、場面に応じて対応の強弱をつけるタイプだという。坪井社長はその違いをこう語ります。

「AIはどっちかというと平ら。ずっと同じ状態で。そこが社員にとっての安心感になっていると思います。」

この安定感が、社員が安心して本音を出せる土台になっているそうです。坪井社長はAIキャプテンの存在を、こう位置づけています。

今自分の代わりに管理職として頑張ってくれてるのは、AIキャプテンなんですよね」

管理職のいない組織で、社長とAIキャプテンの「2タック」でマネジメントチームを作っています。ぶれない。忘れない。毎日向き合ってくれる。それは、坪井社長が一人では実現できなかったことでした。

AI社長は導入企業ごとに「どんなコミュニケーションをAIにさせたいか」を設計できます。
今回のAIキャプテンのように、ティーチングとコーチングを組み合わせた人財育成特化の設計も、その一例です。

こんな企業におすすめ ──「社員に考えてほしい」と願うリフォーム経営者へ

── どんな経営者にAIキャプテンを勧めたいですか?

坪井社長がAIキャプテンを薦めたい相手は明確でした。

経営者で、人財育成に力を入れていきたいという方は、AIキャプテンにするのは絶対いいことだと思う」

リフォーム業界は属人化の塊です。
一つの現場に対して担当者しかわからない、営業から現場管理まで一人で一気通貫──そんな環境が日常だそうです。

そんな環境の中で、先輩に相談しようにも皆忙しく、悩みが一人で膨らんでいく。人財育成に悩む管理職の方にも、ぜひ使ってほしいと坪井社長は言います。

ただし、これは「AIに育成を丸投げする」という話ではありません。
坪井社長は毎日、社員とAIキャプテンのやりとりに目を通し、コメントを入れています。社員が成長する過程を見守りながら、自分自身もその対話から学んでいるのです。

「僕自身も、スタッフとのやりとりを見てて、例え話であったり、質問の仕方であったり、普段しないようなことを学べたりできるので」

社員の成長が、社長の成長を促す。AIキャプテンは、その循環を回す装置になっています。

「こんなに物事考えてる子やったんや」──その発見は、社長にとって何よりの成果でした。

AI社長に関するお問い合わせ
▶株式会社THA

編集後記

取材を終えて、一番残っているのは坪井社長の「こんなに物事考えてる子やったんや」という一言でした。

毎月1時間、一人ずつ向き合い続けていた社員の本音を、AIキャプテンは毎日の短い対話の中で引き出していた。社長が「答えを持ちすぎていた」から見えなかっただけで、社員はずっと自分の言葉で考えていたのです。

人財育成の壁は、「社員の問題」ではなく「関わり方の問題」であることが少なくありません。その構造に気づかせてくれる存在として、AIキャプテンは機能していました。 今回の事例は、社長自身のAI化ではなく、業界の専門人財の知見をAIに実装するという新しい活用の形です。

「社長の分身」だけがAI社長の使い方ではない。会社にとって大切な人物の知見を、毎日の対話を通じて社員に届ける──その可能性を、坪井社長の言葉が証明していました。

初出: note.com

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